NEDフレームワーク
定義
時田隆佑(トキタ企画)が提唱する思考・実践フレームワーク。Narrative(物語)・Edit(編集)・Design(設計)の3要素で構成される。
AI時代において、かつての「仕事の職能」から**「個人が持つべき姿勢」**へと役割を変えつつあると再定義されている(2025-11-14 note記事)。
3要素
| 要素 | 和訳 | 内容 |
|---|---|---|
| Narrative | 物語 | 相手が何を大事にしているか、背景にある文脈や前提を読み解く力 |
| Edit | 編集 | 膨大な情報の中から何を残し、何を捨て、どこをつなぐか判断する力 |
| Design | 設計 | それらを構造として組み直し、他者に伝わる形へと翻訳する力 |
AI時代における再定義
従来:各工程の「専門職能」(企画する人・書く人・デザインする人)
現在:一人の人間が持つべき態度・姿勢
「AIが生成した『もっともらしい正解』を超えて、現実の接点を見極めるための態度そのものだ」(時田隆佑)
なぜ個人の姿勢か:
- AIが一気通貫でプロジェクトを完結できるようになった
- ツールの使い方ではなく、「もっともらしさに流されず現実をつなぎ直す判断」が差別化要因になる
- この姿勢がなければ社会は「きれいなだけの抜け殻」で埋め尽くされる
各要素の深掘り
Narrative(物語を読む)
ナラティブはストーリー(筋書き)と異なり、「その人自身が生きてきた経験の積層」(価値観・習慣・記憶・痛み・誇り・願いが無自覚に積み重なったもの)。
Narrativeを「読む」ための具体的実践ツールとして ナラティブの因数分解(4層レイヤー) がある。個人・集団・場・時代という4レイヤーで事象を分解し、単一の「個人のナラティブ」だけに帰着させない観察法。企画技術としても対人理解ツールとしても機能する(2025-12-05記事より)。
表面的な情報ではなく、その背後にある:
- 依頼者の価値観・優先順位
- 地域や組織の歴史・文脈
- 関係者間のズレ・前提の違い(行政・住民・観光客・企業が「すれ違う」根本原因)
を読み取る力。ナラティブに目を向けることで、地域や組織は「問題の集合体」ではなく**「可能性の源泉」**として立ち上がってくる。
Edit(編集する)
情報過剰時代における取捨選択の力:
- 何が本質で何がノイズか
- どこがつながっていてどこが切れているか
- つなぐ役割(Connector Role)の核心に近い
Design(設計する)
読み取り・選択した内容を:
- 構造として組み直す
- 他者に伝わる形に翻訳する
- 実装・行動につながる形にする
Designの本質は「ポスターやロゴを作ること」ではなく**「座組と環境の設計」**。具体的には:
- 「誰と誰の組み合わせか」というチームデザイン(座組設計)の見立て
- メンバーが能力を発揮できるよう障害物を除く黒子型ディレクション
- 調整・翻訳・安全地帯の明示という地味な積み重ね
結果として関わった人々の物語の更新(Narrative Update)が起き、10の投入→10+αの結果が出る。
NEDサイクル
Narrative(物語の収集)
→ Edit(文脈の整理)
→ Design(座組・環境の設計)
→ 物語の更新 → 次のNarrative
関連コンセプト
- もっともらしさ(Plausibility) — NEDが超えようとする表面的正解
- つなぐ役割(Connector Role) — EditとNarrativeの実践形態
- 余白の仕事 — Editが扱う「見えない価値」の領域
- チームデザイン(座組設計) — Designフェーズの人選・組み合わせ設計
- 黒子型ディレクション — Designフェーズの実践スタイル
- 物語の更新(Narrative Update) — NEDサイクルの最終アウトプット
- 日常編集(Everyday Editing) — Edit軸の生活スケール実践版(額装など)
- 見立て(Mitate) — まちづくり・日常場面での Edit 起点となる認知的操作
- ナラティブの因数分解(4層レイヤー) — Narrative軸の実践ツール。個人・集団・場・時代の4層で観察を分解する
- 定義と意図(Definition vs Intent) — Edit軸の言語使用論。「定義」より「意図の共有」が創造的余白を生む
- 言語の仮置き(Provisional Language) — Edit軸の実践的帰結。状況に合わせ言葉を更新し続けること
- 語り得ぬもの(Wittgenstein) — Narrative(根底の意図)が言語化できない領域を保護する哲学的根拠
サービスへの応用(自己紹介記事より)
トキタ企画の4サービスとNED三軸の対応:
| サービス | NED軸 |
|---|---|
| 企画・戦略立案 | N(文脈読解) + E(整理・方向性) |
| 編集・ストーリーメイキング | N + E |
| デザイン・体験づくり | D |
| 伴走支援・研修 | N + E + D(循環) |
比較フレームワーク(外部言説)
NED と類似/対比できる海外・国内のフレームワーク群。詳細は Research_NED周辺言説マップ を参照。
| フレームワーク | NEDとの関係 |
|---|---|
| 編集工学(松岡正剛、日本) | NEDの Edit 軸の知的バックグラウンド。Narrative 独立軸はない |
| ナラティブブランディング(電通PR 等、日本) | NEDの Narrative 軸(読み取り)の出力側に対応する共創フレーム |
| StoryBrand Framework(Donald Miller、米国) | Narrative の固定テンプレ(顧客=ヒーロー)。NEDの再現性版 |
| Narrative Experience Design(Cambridge 2025) | 物語的瞬間を起点とするサービスデザイン学術理論 |
| Speculative Design(Dunne & Raby) | NEDの「未来時制」版。シナリオ・架空プロトタイプ |
| Design as Agent of Narratives(ScienceDirect 2024) | 物語×デザイン3層モデル。NEDに最も近い学術的枠組み |
NEDの独自性: Editを独立軸として明示し、個人の姿勢として三軸を統合している点(Research_NED周辺言説マップ 参照)。
「姿勢としてのNED」宣言
「NEDは、複雑な現場を生きるための、小さな羅針盤のようなものだ。迷ったとき『ナラティブに戻ればいい』『違う切り口で編集してみればいい』『デザインまで落とし込めば進める』という言い訳があるだけで、人は案外、前に進めるものだ。」(時田隆佑、2025-11-13)
本記事(2025-11-13)ではNEDを「体系でも技法でもなく、世界との向き合い方そのもの」と定義し、「言い訳」として使ってよいという実践的許容を明示している。
NEDと「推しごと」の接続(2025-11-28 記事より)
251128_属性で人を語る時代の終わりと熱量でつながる推しの正体(2025-11-28)では、推し活の「推しごと」現象がNEDサイクルそのものだと論じている。
「強烈なナラティブが起点となり、それが編集され、新たな形として社会にデザインされていくプロセス」(時田隆佑)
- Narrative: 推し対象への熱量・共鳴(属性ではなく心理的共鳴)
- Edit: 熱量を特定の形(ブログ・イベント・コミュニティ)に絞り込む
- Design: 社会に届く形(仕事・活動・コミュニティ)として実装する
この視点は Narrative が「他者の物語を読み取る」だけでなく、「自分の熱量・共鳴を起点にする」という側面を補強する。
出典
- 260103_言語化オジサンになる前に定義するのをやめて意図を示そう(2026-01-03)— NED三軸を「定義 vs 意図」の対比で実践的に再説明。「言葉を仮置きして更新し続けることがEditの本質」と定義。北本市駅前プロジェクトでの会議体名称変遷が具体例。定義と意図(Definition vs Intent)・言語の仮置き(Provisional Language)の主要出典
- 251113_NEDのススメ_物語を起点に世界を編みなおす(2025-11-13)— NEDの入門解説・各要素の定義・「姿勢としてのNED」宣言。最初期のNED紹介記事
- 251114_もっともらしさの時代につなぐ力はどこへ向かうのか(2025-11-14)
- 251117_自己紹介_時田隆佑(2025-11-17)— サービス定義の一次資料。NEDの三軸がそのままサービス4軸に対応している
- 251121_企画の物語更新とDesign-時田隆佑(2025-11-21)— Designフェーズの詳細展開。座組設計・黒子ディレクション・物語の更新の具体論
- 251126_子どもの落書きを額装したら散らかった風景も物語のある場所に変わった(2025-11-26)— Edit軸の日常実践例。額装・見立て・日常編集
- 251128_属性で人を語る時代の終わりと熱量でつながる推しの正体(2025-11-28)— 推しごと×NEDサイクルの接続。Narrativeの「自発的熱量」側面の補強
- 251201_プロジェクト進め方診断_時田隆佑(2025-12-01)— YES/NO診断チャートでNEDをサービス実装レベルへ落とし込んだ実践例(プロジェクトフェーズ診断)
- 251204_感情はウェットに_伝達はドライに_摩擦係数ゼロの仕事術(2025-12-04)— NEDのナラティブ軸をチーム設計(スーパーフラット)に応用した実践例
- 251205_分かり合えない_を諦めない_視点の_レイヤーを変えて観察してみる(2025-12-05)— Narrative軸の具体的実践。4層レイヤー(個人・集団・場・時代)による観察分解法
- 251207_平安人の一生をたった一日で消費してしまうAI時代の私たちへ(2025-12-07)— AI vs 人間の対比でNEDの存在意義を論じた。「指揮者としての知性」「思考の身体性」「認知的OS更新」の出典
- 251210_考えすぎて動けなくなっているあなたへ_悩みを課題に変える編集思考の話(2025-12-10)— Edit軸の最深解説。「悩み→課題変換」「美味しさ(納得感・驚き)」「産みの苦しみとAI壁打ち」を定義。編集思考(Editorial Thinking)の主要出典
- 251212_魅力度最下位のニュースに見る_チャンス_お裾分けから始まるこれからの観光(2025-12-12)— NEDを観光・地域プロジェクトに適用した実践例。「習慣を観光資源化する」という習慣観光(Habit-Based Tourism)の出典
- 251214_今さらデザイン思考と笑う現場の冷笑をどうすれば確信に変えられるか(2025-12-14)— イノベーション・シアター(Innovation Theatre)の定義。N・Eを省略してDから始めることがイノベーション・シアターを生む、という失敗構造の解説
- 251218_NED×AI診断_ノーコードで作る自社専用AI診断_時田(2025-12-18)— NEDフレームワークをAIに学習させた「NED×AI診断」チャットボット実装記録。ノーコードAI実装・AIの分身設計の出典
- 260226_言葉にならない違和感がAI時代の武器になる(2026-02-26)— 暗黙知の言語化がAI時代の人間側の最重要仕事であることを論じた。「違和感を因数分解してAIに入力する」という実践論。暗黙知の言語化(Tacit Knowledge Verbalization)の主要出典
- 260315_ノーコードの天井を超えた日_Claude_Codeで_つくる_が変わった(2026-03-15)— NED×AI診断アプリを Dify から Claude Code に移行し独自アプリ化した実装進化記録。NEDフレームワークを AI 実装にどこまで埋め込めるかの到達点
- 260109_ご当地グルメはなぜタコ壺化するのか_定義オジサンへの処方箋(2026-01-09)— NEDのEdit軸を地域ブランディングに応用した実践例。タコ壺化(地域ブランディング)・定義フェーズとハックフェーズ・ラベリング戦略(加点タグ付け)の出典
- Research_NED周辺言説マップ(2026-04-26)— 比較フレームワーク調査
- 260408_極端な話_いまの延長に世界がみえているか(2026-04-08)— 射程(仕事の届く範囲)概念を導入。Narrative軸の「仕事を物語として捉える」実践として「妄想(連想の連鎖)」を定義。言葉が射程(Edit軸)を制限するという指摘
- 260405_部分最適が効きすぎて仕組みの外が消えかけている(2026-04-05)— 「仕組みの外にある物語・熱量・楽しさ」こそがNEDのNarrative軸の源泉だと示す。部分最適の罠(Local Optimization Trap)・遊びの消失(Loss of Slack)・仕組みの外(Outside the System)の主要出典
- 260412_ホームセンターをアートセンターに置き換えてみたとする(2026-04-12)— NEDを「概念という道具」として語った記事。「持った瞬間に現場の解像度が変わる」という道具論的な枠組みからNEDを再照射。概念の道具化(Conceptual Tooling)・施設文法 vs 道具文法(Facility Grammar vs Tool Grammar)の出典
- 260424_Claude_Codeと気まずく別れる日の正体(2026-04-24)— AIエージェントとの分業実践論。Edit軸の核心「何を残し何を切りどこで止めるか」を「問いは人間が握る」という原則に昇華。エスキス的思考(Esquisse Thinking)・問いの更新(Question Update)の出典