妄想による射程拡張
定義
時田隆佑(トキタ企画)が2026-04-08 note記事で提示した、射程(仕事の届く範囲)を伸ばすための方法論。特別な発想力や才能は不要で、目の前のものを「少しだけ遠くまで連れていって、その途中の景色を想像する」行為として定義される。
「妄想」という語を使うことで、高度な分析ではなく日常的な思考拡張として敷居を下げている点が特徴。
方法
ステップ:連想の連鎖
目の前のモノ・仕事から出発し、関係する存在をひたすら連ねていく。
米屋の例: 米がある → 農家がいる → 産地がある → 気候がある → 食文化がある → 地球がある
「今月いくら売れるか」で止めれば米は米でしかない。連鎖を続けると一袋の米が違って見えてくる。
本屋の例: 本がある → 書き手がいる → 読み手がいる → 知識がある → 文化がある → 時代がある
書類整理の例: 書類がある → 誰かの判断がある → 組織の記憶がある → 誰も覚えていない決定の痕跡がある → 歴史になる
歴史を辿る
歴史を調べることが射程拡張の実践的な入口。目の前のモノに「どこから来て、誰の手を渡って、いまここにあるのか」という時間の流れを付与する。
「歴史を辿ると、自分の仕事の線が、過去のほうにも未来のほうにも伸びていく感覚がある。目の前のモノが、急に時間を持ち始める。」(時田隆佑)
著者の体験例:熊谷花火大会
コロナ禍での中止決定が「百年の歴史」を目の前に現れさせ、過去のひいじいさんたちを想像させた。そこから「一箇所に集まらない花火大会」(市内5箇所分散)という新しい形を企画。翌年は10箇所に拡大。
「この記憶が先々に残る」というリアリティが射程拡張の動機づけとして機能した。
妄想が止まる原因
妄想が途中で止まる主な理由は言葉にある。仕事の呼び方が射程の入口を決定し、呼び方が狭ければ妄想の広がりも制限される。
さらに外から降ってくる強い言葉(顧客・上司・業界常識・カスハラ等)は、本人の内部の妄想を強制的に止める。これは個人の能力の問題ではなく構造的な問題。
実践的処方
射程が縮んで妄想が難しい日は、「自分が自分に向ける言葉くらいは、少しだけ広いものを選んでおく」という最小限の実践が提案される。「何かが変わるわけでもないけれど、明日、戻ってくる場所として」という言い方が印象的。
NEDフレームワークとの関係
妄想による射程拡張は、NEDフレームワークのNarrative軸(物語を読む・広げる)の個人的実践に対応する。自分の仕事の「物語」を時間・空間・関係性の軸で広げていく行為であり、Narrativeを受信するだけでなく発信・構築する側面を持つ。
関連コンセプト
- 射程(仕事の届く範囲) — 妄想の対象となる概念
- 言語の仮置き(Provisional Language) — 言葉の制限を意識的に外すEdit的実践
- NEDフレームワーク — 妄想(Narrative軸の拡張)の思想的背景
- 編集思考(Editorial Thinking) — 「悩みを課題に変える」編集思考と射程拡張は相補的
- 指揮者としての知性 — 射程を持って全体を俯瞰する知性のあり方
出典
- 260408_極端な話_いまの延長に世界がみえているか(2026-04-08)— 概念の初出