定義と意図(Definition vs Intent)

定義

時田隆佑(トキタ企画)が2026-01-03 note記事で提唱した対比概念。

言葉の使い方には二つのモードがある:

モード特徴メタファー
定義(Definition)範囲を固定・動かなくする。一度決めたら変えてはいけない圧力を生む「ここから出るな」と縛る
意図(Intent)向かう方角を示す。具体的手段には余白を残す「あっちに向かおう」と指差すコンパス

なぜ「定義」は問題になるか

「言語化ブーム」(解像度向上・モヤモヤの言語化)は、言葉で定義することを「優秀さ」の証明として扱う傾向がある。しかしこれには弊害がある:

  1. 固定化圧力 — 一度定義したら変えられないという心理的コスト
  2. 思考停止 — 「間違ってはいけない」というプレッシャーが沈黙を生む
  3. 創造性の消滅 — 具体的手段が決められると、メンバーの工夫の余地がなくなる
  4. 「語り得ぬもの」の破壊語り得ぬもの(Wittgenstein)(感情・美しさ・価値)を安易に言語化すると本来の輝きが失われる

「意図共有」が生む余白

意図さえ共有できていれば、具体的な手段の部分に余白が生まれる。

「その余白こそが、メンバーの創造性を引き出し、プロジェクトに命を吹き込むスペースになる。」(時田隆佑)

これは 余白の仕事 と同じ構造を、「言葉の使い方」レベルで記述したもの。

AIプロンプトが証明したこと

LLMの進化は「定義→意図」のシフトを技術的に証明した:

  • 初期プロンプトエンジニアリング:「文字数○文字、文体○○、禁止事項○○」と詳細に仕様定義
  • LLM進化後:「こういう背景で、こんなことを実現したい」という意図・文脈を伝える方が精度が高い

意図ベースのプロンプト設計 として体系化できる。

「AI相手でさえ定義より意図が有効なら、人間同士ではなおさらだ」という論理。

「言語の仮置き」という実践

意図共有モードでは、言葉は**仮置き(provisional)**になる:

「現時点ではこう呼ぼう」「意図は変わらないけど、表現は変えていこう」

これを体現した実例が北本市駅前プロジェクトでの会議体名称の変遷:

フェーズ会議体名称
広場活用期『つかう会議』
運用可視化期『広場を育てる会議』
街全体視座期『まちのリズムを育てる会議』
観光協会移管後『北本の観光のこと考えちゃわナイト』

根底の意図(「自分たちの街を自分たちで楽しくする」)は不変。言葉だけを状況に合わせ更新した。

言語の仮置き(Provisional Language) として独立コンセプト化できる。

NEDフレームワークとの接続

NED軸対応
Narrative根底の変えられない想い・意図の源泉
Edit状況に合わせて言葉を更新し続ける行為そのもの
Design更新された言葉を具体的な形・場として実装

「言葉を仮置きし、更新し続けること。それこそが、変化の激しい時代における『編集』という行為の本質だ。」(時田隆佑)

ウィトゲンシュタインとの接続

「語り得ぬものへの畏敬」(語り得ぬもの(Wittgenstein))は、このコンセプトの哲学的基盤:

  • 言語化できないことは「思考不足」ではなく、言語の本質的限界に触れている場合がある
  • 感動・倫理・価値は言語化した瞬間に「よくある言葉」に陳腐化するリスクがある
  • 「沈黙」は畏敬であり、「定義しないこと」も態度として有効

関連コンセプト

出典