「分かり合えない」を諦めない。 視点の「レイヤー」を変えて観察してみる
時田隆佑(トキタ企画)による 2025-12-05 note記事。
核心主張
「いいアイデア」は頭の中からではなく、対象の徹底的な「観察」から生まれる。観察の精度を上げるには、目の前の事象を一枚の絵としてではなく**複数のトレーシングペーパーが重なった「層(レイヤー)」**として捉え、一枚ずつめくるように分解する。
この「分解して見る」作法は企画技術であり、同時に人間関係の摩擦を減らす知恵でもある。
4つのナラティブ・レイヤー
著者は「ナラティブの因数分解」として以下の4層を提示する。
| レイヤー | 内容 |
|---|---|
| 個人のナラティブ | キーパーソンの原体験・感情・こだわり・愛着 |
| 集団のナラティブ | 組織の論理・業界慣習・地域コミュニティのルール・力学 |
| 場のナラティブ | 地形・地質・気候・街道筋の歴史。なぜそこに町ができたか |
| 時代のナラティブ | 人口減少・テクノロジー進化・経済状況。大きな時代のうねり |
シャッター街の例
シャッター街再生企画で「店主がやる気がない(個人のナラティブ)」と決めつけると、解決策は「やる気のある人を連れてくる」という短絡的なものになる。
レンズを変えると:
- 場のナラティブ: 川の氾濫を防ぐ堤防ができて人の流れが変わった
- 集団のナラティブ: 商店街組合の古い規約で業種転換が難しい空気が残る
→ 「堤防を活かした景観づくり」「規約の現代的解釈の提案」など、文脈に沿った企画が立ち上がる。
対人関係への転用
「あの人は性格が悪い(個人のナラティブ)」で終わらせず、同じ4レイヤーで透かして見る。
- 集団のナラティブ: 組織の構造が変化を許さず、彼はそれを代弁させられているだけかも
- 場のナラティブ: 育った環境・生活拠点の地勢が保守的思考を形成したかも
- 時代のナラティブ: 世代間の価値観のズレが言葉の定義を食い違わせているだけかも
→ 「彼が悪い」から「彼をそうさせている背景がある」への視点移動。怒りの温度が下がる。
「決めつけ」と「認知」の対比
- 決めつけ: 分かりやすいラベル(「田舎だから」「古い人だから」「若者だから」)
- 認知: 「あなたの背後には、そういう物語の地層があるんですね」と事実として受け取る
同意できなくてもいい。「認知すること」で良い企画の芽を守り、人間関係の可能性を開く。
観察の切り口は固定しない
4つのレイヤーは絶対ルールではない。CTスキャンのように切り口を変えれば断面が変わる。
- 「経済・文化・技術」
- 「ハード・ソフト・オペレーション」
- 「売る・買う・つくる」
重要なのは**「目の前の事象をひとつの塊として見ない」**こと。
関連コンセプト
- ナラティブの因数分解(4層レイヤー) — 本記事で提示された核心フレーム
- NEDフレームワーク — 本記事はNarrative軸の具体的実践法
- もっともらしさ(Plausibility) — 「決めつけ」はもっともらしさの一形態
- つなぐ役割(Connector Role) — 複数レイヤーを横断して理解する力が前提
- 余白の仕事 — レイヤー観察で見えてくる「見えない背景」