イノベーション・シアター(Innovation Theatre)

定義

ワークショップ・アイデアソン・カラフルな付箋壁を使って「新しいことをやった気」になるが、そこから実際の事業変革や課題解決が何も生まれない状態を揶揄した言葉。「劇場(Theatre)」=見せかけの演技であり、外部から見ると活発に見えるが内実は空虚。

典型的な症状

  • ワークショップを開催するが、成果物が「きれいな付箋ボード」で終わる
  • アイデアは出るが、次のアクションに誰も責任を持たない
  • 「やった感」だけが残り、組織・地域の実態は何も変わらない
  • 繰り返すことで現場の「メソッド疲れ」と冷笑が蓄積される

発生メカニズム(NEDフレームワークによる分析)

時田隆佑(トキタ企画)によれば、イノベーション・シアターの根本原因はNarrative(N)とEdit(E)を省略してDesign(D)から始めることにある:

  1. 組織・地域の歴史、関係者間の利害対立、前提の違いを整理しないまま(N省略)
  2. 異なる立場の意見を繋いで合意点を形成しないまま(E省略)
  3. いきなり「さあ、デザイン思考でアイデア出し」と号令をかける(Dから開始)

「基礎工事をせずに建物を建てようとする行為に他ならない」(時田隆佑)

「デザイン思考批判」との関係

2025年、日経BPトレンドマップでデザイン思考が注目ワード3位にランクインした際、SNSでは「今さら?」という反応が広がった。この冷笑の背後にあるのは、デザイン思考そのものへの否定ではなく、イノベーション・シアター化した現場経験への疲弊と考えられる。

問題はメソッドの新旧ではなく、準備不足での適用にある(デザイン思考(Design Thinking)参照)。

対処法

イノベーション・シアターを避けるためには、Design(メソッド適用)の前に:

  1. ステークホルダーのナラティブ(歴史・感情・前提)を言語化する(Narrative)
  2. 対立する利害・意見の中から合意点・筋道を形成する(Edit)

この地味で時間のかかる「下準備」が不可欠。

関連コンセプト

出典