スペキュラティヴデザインのプロセスモデル(Select-Explore-Transform-Provoke)

定義

Speculative Design は思想・態度としては豊かだが「実装を支え導く共通の核(a common core that supports and guides its implementation)」を欠き、教える・適用する・評価することが難しい——という長年の批判に応えて提案された、4段階のプロセスモデル。系統的文献レビューから抽出された。

  1. Select(選定)— 思索の対象となる論点・前提を選び取る
  2. Explore(探索)— ありうる代替(オルタナティブ)を想像で広げる
  3. Transform(変換)— コンセプトをプロトタイプ(diegetic artifact)として物質化する
  4. Provoke(挑発)— 批判的省察を喚起し、議論を起こす

著者らはこれを 「逆さの double diamond(inverted double diamond)」 と表現する。従来の問題解決型デザイン(収束=解を一つに絞る)に対し、スペキュラティヴデザインは問題発見型で、解より「問い・選択肢・議論」を増やす方向に開くことを視覚的に示す。

出典

  • 論文: David Cardenas Cordova, Nick Kelly, Leo Rezayan, “A systematic literature review of the speculative design process and a proposed framework for speculative design,” Design Science, Vol. 11, 2025
  • URL: Cambridge Core / Design Science
  • 注: 2026-06-06 ned-scanner で発見

NED との関係

  • Design 軸の「未来時制」運用を手順化する補助: 既存の Speculative Design page は Dunne & Raby の思想(Futures Cone / World-building)を扱うが、それをいつ何をするかの手順に落としたのが本モデル。NED の Design フェーズで地域の未来シナリオを使うとき、この4段階を「やること表」として転用できる
  • Edit 軸との対応: Select(何を思索対象に選ぶか)は NED の Edit 軸「取捨」とほぼ同じ操作。NED が「現在の物語を整流する Edit」なら、本モデルの Select は「未来の問いを選ぶ Edit」
  • 対比軸として: 通常のデザイン思考(デザイン思考(Design Thinking))の double diamond を反転させている点が要点。NED は「解に収束させず物語の選択肢を開く」局面を持つため、この inverted double diamond は NED の非収束的フェーズを説明する語彙になる

観察メモ

  • スペキュラティヴデザインは「単一の方法論ではなく、design fiction / critical design を含む緩い傘概念」と整理されてきた(2026 のフィールドガイド系記事も同様の認識)。本モデルはその緩さを欠点とみなし共通核を与える試みで、学術・教育文脈での採用を狙う
  • NED 営業文脈では使いどころが限定的(未来探索を求める案件は地域案件では稀)。だが「提案=解を一つに絞る」だけでないデザインの型がある、と示す説明の引き出しとして有効